「先輩！サンプルのプリントアウト終わりました！」

「うん。じゃあ、この紙に書き込んでって、あとで清書することにしようか。」

「書き始める前に、大前提を確認しておくよ。
企画書は、作品のいちばんおおもとの部分を固める為に作る。
ナナハの中にあるもやもやっとした「作りたいアニメ」のイメージを、
具現化するための第一歩だ。
そのためには、企画書の書き手のナナハの中で分かってるだけじゃダメで、
企画書を読んだ相手に分かる言葉で、伝わるような表現で書かなきゃならない。
......って抽象的な一般論を言っても、ぴんとこないだろうな......


よし、考え方を変えよう。
読者と目的を設定するぞ。
ナナハ。この企画書は、「あにめ部の入部希望者」と、予算を握ってる「生徒会役員」「生徒会顧問の先生」に見せる。入部希望者に、こんなアニメだったら作ってみたい、と思ってもらうことと、生徒会連中に、この内容なら予算を出してもいいって納得させることが目的だ。」

「えええっ？そんなああ」

「読ませる相手の顔をひとりひとり思い浮かべてみよう。やつらに伝わるように書けばいいよ。」

「企画の種類は、アニメーション企画......でいいんですね」

「うん。詳しいことは次のページで書くからね。シンプルにいこうか。
何かアオリやサブタイトルを入れる必要がある場合は、企画の種類をごてごてさせるんじゃなくて、もう一行追加しよう」

「作品の名前......どうしよう」

「ここは、企画がすすんでから変更も可だから、（未定）でも（仮）でもいいよ。何かある？」

「うーん、うーーーーーん」

「思いつかないんだったら、いいよ(^^;;;;)。タイトルは大事だから......。最初に適当なのをつけてしまったがために、後々まで祟るってことも、あるからね。」

「これはあるゲーム会社での出来事らしいんだけど、ゲームの最初の企画書を書いた企画者が、たまたまそのとき目の前のペットボトルにあった栄養素の名前、たとえばポリフェノールとかそういうのね、仮タイトルにしたらしいんだ。そしたら、あとでメイン企画者になったひとがそのタイトルに拘っちゃって、最終的に、そのプロジェクトは完成せずお蔵入りになりました、っていう話も......いや、噂だけどね、あはははは」

「先輩、詳しいですね！そんけー」

「と、とにかく、今は（タイトル未定）でいいんだね」

「書いた人は、晶嵐学園中等部、２年星組、清良七葉っと」

「そこは違うなあ、ナナハ。レポート提出じゃないんだぞ。
学年、組も書いていいけど、この企画書は、あにめ部部長として書くんだぞ。
「企画・制作／晶嵐学園あにめ部
　文責／清良七葉（中等部２年星組）」
という表記が、妥当なところだ」

「はーい。書き直しましたーー」

「日付は今日の日付をっと。
あと、見せる相手を決めたんだったね。相手の名前を入れよう。場所は左の一番上あたりがいいかな。
「晶嵐学園あにめ部　入部希望者様」「嵐封会 執行部メンバー各位」この２件は別々に見せるから、２パターン印刷しておこう。
一緒に見せる場合は併記しておこうね。
敬称は、個人宛なら、「様」じゃなくて「殿」を使う事も多いね。組織なら「御中」とか」

「手紙と一緒だねー」

「とりあえず下の「概要」ってところから埋めていこう。ここがアニメの仕様になるからね」

「はーい。ってまたタイトルがーーー」

「ここは（タイトル未定）にしといて、次埋めようか」

「ジャンルって、どういう意味でのジャンル？ロボットものーとか、ホラー、とか？」

「そうだね。アニメの企画書だから、どういう種類のアニメなのか、を書いてね。物語とか演出の方向性がわかるようなやつ」

「はーい。「ファンタジーアニメ」」

「それは、だめです」

「なんでーー？」

「ファンタジーって言葉は適用範囲があいまいで広すぎる。非現実＝ファンタジーと仮定すると、ノンフィクションじゃない創作作品は全部ファンタジーって言えるかも。そこまで広くしなくても、舞台が現実で異世界から一人来訪者が、でもファンタジーになるし、すみからすみまで異世界でもファンタジーになるし。ファンタジーって言葉を入れたいなら、何か補足してね」

「じゃあ、「七本の剣と三系統の魔法があり、光と闇と混沌から生まれた異世界の......」」

「長すぎるのでもうすこし簡潔におねがいします」

「「剣と魔法の異世界ファンタジーアニメ」」

「それくらいが、いいかな。
次はターゲットだね。誰に見せたいか、想定する視聴者層を書いてね」

「はーい。老若男女すべての人に親しまれる......」

「それは、だめです」

「なんでーーーーー？」

「できればよのなかの全員に見て欲しいのは、どんな作品を作る人でも同じなんだよ( ^ ^;)全員をターゲットにっていうのは、何も決めてないのと同じだから......」

「じゃあ、同年代ぐらいの子。」

「中学生男女、かな？そのほかに何かターゲットにしたいひとの属性ある？」

「よくわかんなーい。たとえば、どんなの？」

「たとえば、携帯サービスのメインターゲットは、地方在住で、携帯以外のものにあんまりお金かけない中高生だよね。人との待ち合わせも携帯経由でやるし、TVみながら携帯で検索、ともだちにメール送ってから５分で返事返ってこなかったら嫌われたんじゃないかと思う。ケータイ小説を書く人なんかは、彼女たちをターゲットにするといいわけだ。でも、ナナハはそうじゃないよね」

「うーん。携帯はふつうに使うけど、そこまで中毒のひとのきもちはわかんないかも」

「でしょ。すると、ちがう属性の人をターゲットにすることになると思うんだ。たとえばBL読みとか......」

「ナナハはBLよまないよ！きよくただしい中学生だもん！」

「はいはい。健全なのね。でも、健全っていうのも、成人向けじゃありませんってだけの意味だから、ジャンル名でもないしターゲットを特定できる情報でもないよ。
たとえば、そうだな......ナナハ、雑誌買ってる？」

「うーんと、しゅごキャラがひょうしのときは、なかよしを......」

「ずばり、「なかよしを買ってるような中学生女子」でも、いいね。ひとむかし前のマーケティングだと、買っている雑誌＝ターゲット属性ってのは定番だったみたいだよ。
でも、ナナハも、しゅごキャラがないときは、買わないんだね......。さいきんはファン属性もセグメント化がすすんでるから、むずかしいね」

「とりあえず、中学生男女って書くねー」

「媒体ってなぁに？」

「媒体＝メディア＝公開方法。どうやって人にみせるかだね。商業アニメだと、ＴＶ放映、ＯＶＡ、劇場公開、なんかがあるね。自主アニメだと、ネット上で公開するか、上映会に参加するか、同人イベントでＣＤやＤＶＤ頒布、てことになると思うけど......」

「とりあえず、嵐封祭で上映するよー」

「講堂のスクリーンで上映だね。機材はちゃんと確認した？」

「......」

「スペックは確認しておこうね......。まあ、僕は使ったことあるから、わかるけど(- -;;;) ＤＶＤとＤＶが上映できるよ。

媒体を先に決めておくのは大事だよ。なぜかっていうと、動画の解像度とフレームレートの問題がでてくるからなんだ。
※注：FLASH、gif、3DCGアニメ等、制作方法が根本的に異なる場合もあります。
解像度は画面の密度で、フレームレートは１秒間に何枚の絵を映すかだね。
一般的なＤＶＤに収録されてる動画は解像度720×480でつくられてる。フレームレートはアニメの場合約24fpsのことがおおい。
劇場用はフルハイビジョンだと1920×1080だ。
web公開だと、配信先によってバリエーションがあって、まちまちだ。
ニコニコ動画で最高画質にするためには512x384でつくる必要がある。
......エンコードのとき拡大縮小することもできるけど......」

「？？？？？？？」

「簡単に言うとね、ちっちゃく作って、あとで引き延ばすと絵が汚くなるんだよ。かといって、高画質で作るとファイルサイズが大きくなって、編集のとき、処理が重くなって作業に時間がかかったりパソコンがフリーズしたりＨＤＤが埋まったり大変なんだ。だから、媒体は先に決めて、最適サイズで絵を描きましょうねってこと」

「ＤＶＤのおおきさでいいとおもう」

「了解。あとはあれだね、テレビで見るか、パソコンで見るかで色が変わって見えることもあるし、スクリーンの大画面でみるのとテレビやパソコンで見るのとでは、画面の密度とか演出を変えた方がいいばあいもあるから、どこで上映する予定なのかも書いておこうね」

「嵐封祭で上映・ＤＶＤ販売、ニコニコ・Youtubeにup　てかんじでいいのかなあ」

「そうだね。
で、構成だね。作品のボリュームを書こう。１本完結で、5分程度だったね」

「（かきかき）
リリースは、嵐封祭のひだから、ええと、11月3日・4日でーす」

「これで、概要埋まったね。予算とかスタッフとかが決まってる場合は、それも書いておくといいよ。
キャッチコピーとかアオリとかは、べつにこのページになくてもいいんだけど、まったく構想ナシは企画書としてどうかなあ( ^ ^;;;)
タイトルも（未定）になってるしね......。
いま、一緒に考えてみようか」